-1- 第361号 | 平成20年6月16日 |
平成二〇年四月から、本学園は「新渡戸文化学園」として生まれ変わりました。新渡戸稲造を迎えて「心の教育」を標榜して八十一周年を迎えます。これをさらに続けていくことを明らかにするための学園名の変更であり、現代日本社会の要請に応えるためでもあります。これにあわせて、本紙も「新渡戸文化タイムス」となりました。
新渡戸の名前は「新渡戸祭」で使われ、「新たに渡る戸を開こう」、「夢に飛べ」「夢新渡戸」とも表現されてきましたが、今年からは各学校の教育の基盤を示す学園名として使われます。各学校では、在学生に「夢」を描くこと、「夢」を具体化していくこと、さらに次の「夢」に向かって進んで行くことを指導していきます。
![]()
今年で四年目を迎える新渡戸・森本研究所では、初代校長・新渡戸稲造や創立者・森本厚吉に関する資料を収集しています。これまでに、書簡や葉書の原資料や複写、また過去の学園での出版物などを卒業生などの協力で入手しました。教育方針の基となる資料の展示を、機会を見て進めていきます。
![]()
▲高2 修学旅行
新渡戸稲造 その(9)
「心の教育」
学園長 森本晴生
新渡戸稲造先生は、イギリスのカーライルから思想的に大きな影響を受けたと言われています。十七歳の時(明治十二年)に見たアメリカの古い週刊雑誌で、『衣服哲学』の不正確な引用文を読んだのがきっかけとなり、この本を帰米するハリス牧師から譲り受けて、生涯に三十四回読み返したそうです。
挿入が多く、難解な英文で、和訳でも理解しにくいものですが、十七歳で感銘を受けたことは尊敬すべきことです。
新渡戸先生は、この『衣服哲学』について何度も講演し、大正八年の軽井沢夏期大学での講演録が出版されています。分かりやすい解説なので、カーライルの著作そのものを読むよりもよく分かります。
本学園では新渡戸先生の言葉として「目前の義務を果たせ」を使っていますが、講演では「一番なんじに近い義務をやれ…」と書かれています。そして、二つのことが目前にある場合には「その瞬間において、どちらが迫っているかという、その一番近いところの義務を守ればそれでよい。」と解説しています。
「…そういう実際のこととなると、何でもつまらぬと思うかも知らぬが、それがすなわち理想に達する経路である。」
このように新渡戸先生は難解な原著を、非常に分かりやすく解説しています。本の題名の『衣服』とは、外から見えるもの、見て分かるものを指しています。この本は、人は衣服(外見)で判断することが多いが、中の「心」のほうがもっと大切だと述べています。
これが本学園に引き継がれ、「心の教育」として八十年にわたって続けられています。
(今回から担当者交替)
参考書・『新渡戸先生講演 衣服哲学』高木八尺編、昭和十三年、研究社。『衣服哲学』谷崎孝昭訳、1983年、山口書店
次頁へ
タイムス目次へ戻る
東京文化短期大学資料室へ戻る
Copyright (C) 2008 NITOBE BUNKA GAKUEN